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赤坂氷川祭

江戸時代より続く赤坂氷川神社の祭礼「赤坂氷川祭」は、かつて神社の宮神輿2基を氏子 21ヶ町の山車 13本が警固する形をとって巡行するものでした。徳川八代将軍吉宗公の産土神として幕府の尊崇は篤く、その巡行は豪華絢爛を極め、山王権現・神田明神に次ぐ江戸3番手の規模を誇っていました。

祭礼日

毎年9月中旬

江戸時代の祭礼

江戸時代の赤坂氷川神社祭礼「赤坂氷川祭」は、丑・卯・巳・未・酉・亥年の6月 15 日行われていました。

旧暦の6月つまり現在の7月は、高温多湿な気候で疫病が流行し病気にかかりやすい時期でした。そのため疫病退散を願って、日本各地の神社で疫病鎮めの祭礼が執り行われました。

江戸時代には山王日枝・神田神社の『天下祭』をはじめ、長い行列をしたてて氏子地域内を巡行する大型祭礼が数十あり、これらの祭礼にはいずれも多くの見物人が集まったといわれます。

赤坂氷川神社が徳川幕府の庇護を受けていたこともあり、最盛期の赤坂氷川祭は上記2社に続く大規模な祭礼であったようです。江戸時代後期に書かれた『東都歳時記』には「山王権現、神田明神に続し大祭祀なり」と述べられています。またこの文献には、祭礼前日から周辺は大変な賑わいあり、当日は周辺は通行禁止となり、宮神輿2基、江戸型山車 13 本、さらには附祭(つけまつり)と呼ばれる余興としての練り物・仮装行列が続き、地域一帯は祝祭空間となったと記されています。

その豪華絢爛な情景は、御社殿に納められている『祭礼山車行列額絵』の中に見ることができます。

赤坂氷川祭は町人だけでなく武士の注目も集めていました。赤坂氷川神社南側に屋敷を構えていた松代藩真田家でも、赤飯 を炊いて上屋敷、中屋敷の居住者たちでこれをお祝いしていたそうです。また、町奉行所では、である山王・神田両祭礼とこの赤坂氷川祭に警護の与力・同心を配置するほどの徹底ぶりであり、幕府も別格に位置づけていたことがわかります。

全国の祭礼を格付けした摺物である「諸国御祭禮番附」をみると東方の最上段に山王祭や神田祭につづき「赤坂氷川御祭」と記されており、一般の人々の間でも赤坂氷川祭が「江戸第三の祭」として認識されていたことがわかります。

祭礼山車行列額絵

近年の祭礼

明治維新以降、社会の変化とともに赤坂氷川祭は大きく変貌してゆきます。徳川幕府の消滅とともに、祭礼は神社以外では氏子の費用負担と崇敬者の寄付に頼るようになり、祭礼の規模は縮小を余儀な くされます。

近代化の影響と度重なる震災・戦災により、祭礼を彩ってきた山車は徐々に表舞台から姿を消し、2基あった宮神輿のうち1基は譲渡、もう1基は東京大空襲の際に焼失し、「宮神輿と江戸型山車が巡行する」という赤坂氷川祭の形は失われてしまったのです。

しかしながら、氏子町会の篤い信仰心の元、祭礼の火は絶やされることなく、町会神輿 16 基が氏子地域を隔年に巡行する形で近年まで粛々と続けられてきました。

奇跡的に残存していた 9 本の山車を復活させようという動きが起こったのは、平成 16 年(2004)のことでした。赤坂氷川神社の神職らが中心となり、山車を復活させることで貴重な文化遺産、江戸の粋を後世に守り伝え、地域の人々の結びつきをより揺るぎないものにし、まちづくりの推進に役立てた いとの思いがきっかけでした。

思いをひとつにする人々の働きかけにより、氏子 24 町会、地域の商店街や企業、さらには行政の賛同を得られ、平成 18 年(2006)に赤坂氷川山車の修復・巡行・普及啓発などを事業内容とする 「NPO 法人赤坂氷川山車保存会」の発足にごぎつけました。

翌平成 19 年(2007 年)には約 80 年ぶりの山車巡行を実現しました。山車の巡行が復活をしたことで、神輿を保有していない町会方面にも巡行ができるようになり、少しずつ大きな祭礼へと姿を変えてゆく ことになります。

そして、徳川吉宗公将軍就任 300 年に節目にあたる平成 28 年(2016 年)に、宮神輿の復元新調 が完了し都心のビル群を背景に「約 100年ぶり」の宮神輿と江戸型山車の連合巡行が実現しました。

毎年9月の祭礼では、高層ビルが立ち並ぶ最先端の街において、この街ならではの「江戸祭礼絵巻」が繰り広げられています。赤坂氷川祭そのものの存在価値が高まりつつあり、老若男女 3000 名以上 が参加し、見学者を含めると総勢2万人規模の祭礼へと成長をしてきました。

地域にお住まいの方、地元企業様、商店街様のお力添えのもと祭礼を軸に商店街の地域おこしイベントや、地元飲食店との協働も行われるようになりました。 こうした地域の一帯感の醸成こそが祭礼の本来の意義であると信じ、歴史的背景に基づいた街の新たなシンボルとして役割を担うべく、今後とも地域一帯となって取り組んで参ります。

現在の氷川祭

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